再入院時に入院起算日のリセット(初期加算等の算定)が出来るようになる場合
入院基本料には入院初期ほど加算(初期加算)が取れるものがありますよね。
例えば一般病棟だと、入院から起算して14日以内の期間は1日につき450点が取れます。
こういった初期加算等は、再入院であっても、入院起算日がリセットされる場合には再び算定が出来るようになります。
そのため、入院起算日がリセット出来るかの確認は非常に重要です。
そこで、入院起算日がリセットされる場合をまとめてみたいと思います。
「第2部 入院料等 通則5」から分かること
第2部 入院料等
通則
5 第1節から第4節までに規定する期間の計算は、特に規定する場合を除き、保険医療機関に入院した日から起算して計算する。ただし、保険医療機関を退院した後、同一の疾病又は負傷により、当該保険医療機関又は当該保険医療機関と特別の関係にある保険医療機関に入院した場合には、急性増悪その他やむを得ない場合を除き、最初の保険医療機関に入院した日から起算して計算する。
この通則から以下のことが分かります。
・(同一の疾病又は負傷により入院した場合には初回入院日から起算するとあるので)再入院でも前回と異なる疾病又は負傷による入院の場合は、入院起算日がリセットされる。
・同一の疾病又は負傷による再入院でも、急性増悪その他やむを得ない場合は入院起算日がリセットされる。
「第2部 入院料等 通則の通知7」から分かること
第2部 入院料等
通則通知
7 入院期間の計算
(1) 入院の日とは、入院患者の保険種別変更等の如何を問わず、当該保険医療機関に入院した日をいい、保険医療機関ごとに起算する。
また、A傷病により入院中の患者がB傷病に罹り、B傷病についても入院の必要がある場合(例えば、結核で入院中の患者が虫垂炎で手術を受けた場合等)又はA傷病が退院できる程度に軽快した際に他の傷病に罹り入院の必要が生じた場合においても、入院期間はA傷病で入院した日を起算日とする。
(2) (1)にかかわらず、保険医療機関を退院後、同一傷病により当該保険医療機関又は当該保険医療機関と特別の関係にある保険医療機関に入院した場合の入院期間は、当該保険医療機関の初回入院日を起算日として計算する。
ただし、次のいずれかに該当する場合は、新たな入院日を起算日とする。
ア 1傷病により入院した患者が退院後、一旦治癒し若しくは治癒に近い状態までになり、その後再発して当該保険医療機関又は当該保険医療機関と特別の関係にある保険医療機関に入院した場合
イ 退院の日から起算して3月以上(悪性腫瘍、難病の患者に対する医療等に関する法律(平成26年法律第50号)第5条に規定する指定難病(同法第7条第4項に規定する医療受給者証を交付されている患者(同条第一項各号に規定する特定医療費の支給認定に係る基準を満たすものとして診断を受けたものを含む。)に係るものに限る。)又は「特定疾患治療研究事業について」(昭和48年4月17日衛発第242号)に掲げる疾患(当該疾患に罹患しているものとして都道府県知事から受給者証の交付を受けているものに限る。ただし、スモンについては過去に公的な認定を受けたことが確認できる場合等を含む。)に罹患している患者については1月以上)の期間、同一傷病について、いずれの保険医療機関に入院又は介護老人保健施設に入所(短期入所療養介護費を算定すべき入所を除く。)することなく経過した後に、当該保険医療機関又は当該保険医療機関と特別の関係にある保険医療機関に入院した場合
この通則からは同一傷病による再入院でも、入院起算日がリセットされる場合が分かります。それは以下の場合です。
・一旦治癒し若しくは治癒に近い状態までになり、その後再発した場合
・退院の日から起算して3月以上(悪性腫瘍、指定難病、特定疾患に罹患している患者は1月以上)いずれの保険医療機関に入院又は介護老人保健施設に入所(短期入所療養介護費を算定すべき入所を除く。)することなく経過した場合。
まとめ
再入院時に入院起算日がリセットされる場合
1.前回と異なる傷病による入院の場合
2.(同一傷病による再入院でも)急性増悪その他やむを得ない場合
3.(同一傷病による再入院でも)一旦治癒し若しくは治癒に近い状態までになった後の再発の場合
4.(同一傷病による再入院でも)退院の日から起算して3月以上(悪性腫瘍、指定難病、特定疾患に罹患している患者は1月以上)、同一傷病について、いずれの保険医療機関(介護老人保健施設)に入院(入所)することなく経過した場合。
平成29年8月から70歳以上の方は医療費自己負担の上限額が変わります(患者さん向けの説明資料あります)
平成29年8月から70歳以上の方は高額療養費の上限額が変わります。
これによって今までと所得が変わらなくても、医療費の自己負担が増える方がいらっしゃいます。
特に7月から8月にかけて入院される際は、7月と8月で自己負担額の計算方法が変わって自己負担が増えるというケースが一部の方で出てくると思います。
説明資料はどうしよう?
医療費については普段からちょくちょく問い合わせがあるので・・・
やっぱり事前に患者さん向けに説明をしないといけないよなあ。
説明用の資料がいるよなあ。
作るの大変だなあ。
と思っていたら、
厚生労働省が資料を作成・公開して下さってました!
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12400000-Hokenkyoku/0000158766.pdf
これはそのまま使えます!
ありがたい!
厚生労働省の資料を見ながら
「現役並み」区分の方は外来(個人ごと)の上限額が上がります。
「一般」区分の方は外来(個人ごと)と外来+入院(世帯ごと)の両方の上限額が上がります。
上限額に達しなければ今までと自己負担額は変わらないかもしれませんが、入院するとどうしても上限額に達することが多いです。
例えば、「一般」区分の方が入院している場合、7月は自己負担が44,400円だったのに、8月から自己負担が57,600円に増えるということがあり得ます。
後からトラブルにならないためにも患者さんへの丁寧な説明が必要ですよね。
労災の入院基本料加算が減点(「入院の日から起算」と「入院期間に応じ」の違い)
労災には健保にはない独自の点数項目がありますよね。
そんな労災独自の入院基本料加算が減点査定されてしまいました。
減点の具体的な内容
労災の患者さんが3月1日に入院し3月10日に退院したのですが、同じ病名で4月20日に再入院となりました。
入院期間の計算上、起算日が変わらない再入院です。
そこで4月20日から4月23日については
一般病棟入院基本料×1.30倍(労災独自の14日以内加算)
+450点(健保の14日以内加算)
で算定していたところ
一般病棟入院基本料×1.01倍(労災独自の14日超加算)
+450点(健保の14日以内加算)
へ減点となってしまいました。
最初に連絡があった時は???でした。
健保の14日以内加算はOKなのに、なんで労災はダメなの?と思いました。
その後に要件をよく確認してみたら、同じ14日以内の加算でも労災と健保では考え方が異なることに気づかされました。
労災独自の入院基本料加算の要件
入院の日から起算して2週間以内の期間 ・・・健保点数の1.30倍
2週間を超える日以降の期間・・・健保点数の1.01倍
入院基本料は、入院の日から起算して2週間以内の期間については、健保点数の1.30倍、2週間を超える日以降の期間については、健保点数の1.01倍の点数(いずれも1点未満の端数は四捨五入)を算定することができます。
労災は「入院の日から起算して」なんです。
上の例で言うと、3月1日から起算して3月14日までの入院については1.30倍なんです。
入院していない日数も含めて2週間以内ということですよね。
4月20日から4月23日は3月1日から起算して2週間を超えるため1.01倍になるわけです。
これに対して健保の要件はというと・・・
健保の入院基本料初期加算の要件
A100 一般病棟入院基本料の注3より
3 当該病棟の入院患者の入院期間に応じ、次に掲げる点数をそれぞれ1日につき所定点数に加算する。
イ 14日以内の期間450点(特別入院基本料等については、300点)
ロ 15日以上30日以内の期間192点(特別入院基本料等については、155点)
健保は「入院期間に応じ」なんです。
上の例で言うと、3月1日から3月10日までと4月20日から4月23日の入院については450点の加算がつきます。
入院していない日数は含めず入院期間のみで14日以内ということですよね。
まとめ
「入院の日から起算して」・・・入院していない日数も含めてカウント。
「入院期間に応じ」・・・入院していない日数は含めず入院してる期間のみをカウント。
今まで「入院の日から起算して」と「入院期間に応じ」を同じ意味だと思ってました!
減点査定なんですけど、いい勉強になって有難かったです。
超音波骨折治療法と介達牽引の同時算定
超音波骨折治療法と同時に算定できない処置がありますよね。
消炎鎮痛等処置などが算定できません。
この算定できない処置と算定できる処置が頭の中でごっちゃになっていたので、今回は整理してみました!
超音波骨折治療法に併せて行うと算定できない処置
K047-3 超音波骨折治療法(一連につき)の通知に次のようにあります。
(5) 本手術に併せて行った区分番号「J119」消炎鎮痛等処置、区分番号「J119-2」腰部又は胸部固定帯固定又は区分番号「J119-4」肛門処置については、別に算定できない。
箇条書きにしますと以下の3処置が超音波骨折治療法と同時に算定できません。
- 消炎鎮痛等処置
- 腰部又は胸部固定帯固定
- 肛門処置
超音波骨折治療法は原則として3か月以上連日で実施されるので、上の3処置も3か月以上算定できないことになりますよね。
超音波骨折治療法の点数が高いとは言え、実施しても算定できない処置があるのはちょっと悲しいです。
しかし、介達牽引は同時算定できる
- 消炎鎮痛等処置
- 腰部又は胸部固定帯固定
- 肛門処置
以上の3処置は通知に別に算定(同時算定)できないと書かれてますが、介達牽引は別に算定(同時算定)できないとは書かれていないんです。
つまり、同時算定が可能ということですよね!
通知を理解する前に誤解していたこと
上の通知を良く読んでみる前は超音波骨折治療法と介達牽引は同時算定できないと、勝手に思い込んでました。
というのも、次のリハビリの通則とごっちゃになっていたからです。
5 区分番号J117に掲げる鋼線等による直達牽引(2日目以降。観血的に行った場合の手技料を含む。)、区分番号J118に掲げる介達牽引、区分番号J118-2に掲げる矯正固定、区分番号J118-3に掲げる変形機械矯正術、区分番号J119に掲げる消炎鎮痛等処置、区分番号J119-2に掲げる腰部又は胸部固定帯固定、区分番号J119-3に掲げる低出力レーザー照射又は区分番号J119-4に掲げる肛門処置を併せて行った場合は、心大血管疾患リハビリテーション料、脳血管疾患等リハビリテーション料、廃用症候群リハビリテーション料、運動器リハビリテーション料、呼吸器リハビリテーション料、がん患者リハビリテーション料、集団コミュニケーション療法料又は認知症患者リハビリテーション料の所定点数に含まれるものとする。
リハビリは
- 介達牽引
- 消炎鎮痛等処置
- 腰部又は胸部固定帯固定
- 肛門処置
が同時算定できないとされています。
このリハビリの通則と超音波骨折治療法の通知を混同してしまい、超音波骨折治療法と介達牽引は同時算定できないと勘違いしていたのです。
このリハビリの通則と超音波骨折治療法の通知はちょっと似てないですか?
入院中の患者に対する診療情報提供料(Ⅰ)
入院中の患者さんについて診療情報を提供することがありますよね。
その場合に診療情報提供料(Ⅰ)の算定はどうなるか、まとめました。
①自院に入院中の患者さんが他の医療機関を外来受診する場合
入院料等 通則 通知より
5 入院中の患者の他医療機関ヘの受診
(5) 入院中の患者が他医療機関を受診する場合には、入院医療機関は、当該他医療機関に対し、当該診療に必要な診療情報(当該入院医療機関での算定入院料及び必要な診療科を含む。)を文書により提供する(これらに要する費用は患者の入院している保険医療機関が負担するものとする。)とともに、診療録にその写しを添付すること。
自院に入院中の患者を他の医療機関で診てもらう場合は、自院(入院している医療機関)は他の医療機関へ診療情報を文書により提供しなければならず、そしてその費用は自院(入院している医療機関)で負担しなければならない、とあります。
したがって、自院(入院している医療機関)は診療情報提供料(Ⅰ)を算定できません。また、診療情報提供料(Ⅰ)相当分を患者さんに自費で負担させることもできません。
②他院に入院中の患者さんが自院を外来受診した場合
入院料等 通則 通知より
5 入院中の患者の他医療機関ヘの受診
(2) 入院中の患者(DPC算定病棟に入院している患者を除く。)に対し他医療機関での診療が必要となり、当該入院中の患者が他医療機関を受診した場合(当該入院医療機関にて診療を行うことができない専門的な診療が必要となった場合等のやむを得ない場合に限る。)は、他医療機関において当該診療に係る費用を算定することができる。ただし、(略)医学管理等(診療情報提供料を除く。)(略)に係る費用は算定できない。
ややこしいですけど、
「医学管理等(診療情報提供料を除く。)に係る費用は算定できない。」
ということは、「診療情報提供料は算定できる」ということですよね。
つまり、他院に入院中の患者を診療して、その診療情報を入院先の他院に提供した場合には診療情報提供料(Ⅰ)が算定できます。
③他院に入院中の患者さんで自院の受診がない場合
別の医療機関に入院中の患者さんが以前に当院で治療を受けていました。そこで、入院先の医療機関から当院での診療について情報提供を求められたことがあります。
こういった場合に点数算定はどうなるのでしょうか。
B009 診療情報提供料(Ⅰ) 通知より
(2) 保険医療機関が、診療に基づき他の機関での診療の必要性等を認め、患者に説明し、その同意を得て当該機関に対して、診療状況を示す文書を添えて患者の紹介を行った場合に算定する。
入院より前の診療情報を提供しただけでは、「診療に基づき他の機関での診療の必要性等を認め」たことにはならないので、診療情報提供料(Ⅰ)は算定できません。
上の方の②の場合は、患者に診療を行った上で入院先での診療の必要性を認めて患者を入院先に戻しているわけですから、診療情報提供料(Ⅰ)を算定できます。
傷病名コードにない病名が出てきた場合
Dr.がつけてくださった病名なんですが、そのままだと傷病名コードにないものがあります。
もしその病名と同じ意味で、名前が異なるだけの傷病名コードがある場合は、そちらに置き換えてます。
そういった傷病名コードで規定する傷病名と同一の傷病なのに、名称が異なる傷病名をまとめたものが、厚生労働省が作成した「傷病名コードの統一の推進について」です。
https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/kyushu/iryo_shido/documents/2016033035.pdf
例えば「心因性膀胱」は「神経因性膀胱」に置き換えることが出来ます。
上のリンクからダウンロードして [Ctrl]+「F」で検索してみてください。
K037 腱縫合術の「固有指の伸筋腱の断裂の単なる縫合」とは?
点数算定について労災の説明で参考になったものは、骨内異物(挿入物を含む。)除去術以外でもありました。今回はK037 腱縫合術についての説明を紹介します。
(骨内異物(挿入物を含む。)除去術についてはこちら ↓ )
iryoujimuarekore.hatenablog.com
K037 腱縫合術の通知に以下のようにあります。
『切創等の創傷によって生じた固有指の伸筋腱の断裂の単なる縫合は、区分番号「K000」創傷処理の「2」又は区分番号「K000-2」小児創傷処理の「3」に準じて算定する。』
この「固有指の伸筋腱の断裂の単なる縫合」というのが良く分からない!
労災の本では次のように説明されていました。
「労災医療早わかり【第2部】(平成28年11月改定)」鹿児島労働局労働基準部 労災補償課 72ページ
Q3 手指の伸筋腱断裂等に対する「腱縫合術」の算定について、健保点数表では、「切創等の創傷によって生じた固有指の伸筋腱の断裂の単なる縫合は創傷処理の(2)に準じて算定する。」と記されていますが、伸筋腱の単なる縫合とはどのような場合をいうのですか。A.収縮した腱を探すために部位の延長切開あるいは、補助切開といったものがなく容易に縫合可能な場合をいいます。
したがって、「腱縫合術」を算定される場合は、必ず、部位の延長切開あるいは補助切開の有無及び長さについて、傷病の経過欄またはレセプトの余白に記入してください。
労災の本に書いてある説明ですが、健保でも手指の伸筋腱断裂等に対する「腱縫合術」の算定において延長切開か補助切開の有無とその長さについてレセプトに記載して請求したところ査定はありませんでした。
(※都道府県によって審査の基準が異なる場合がありますので、実際に算定する際には請求先の審査機関等へ確認してください。)